太陽が一日の役目を終える瞬間を見届けながら家へと歩き疲れた足を運ばせる。
玄関でボロボロの靴を脱いでいると、大きな革靴が几帳面に並べられているのが見えた。
父さんが帰って来ているな、何て考えていると
居間からひょっこりと小さな頭が出てきた。
( ゚д゚ )ミルナは夢を弾くようです
('A`)「お帰り」
( ゚д゚ )「ただいま父さん」
('A`)「休みなのにどこへ行っていたんだ」
訝しげな父さんの目に内心ビクビクしていたけど
18にもなって親を怖がるのが恥かしくて
面倒くさそうに父さんの方を振り向いた。
('A`)「またライブのチラシ配りか?
あれほどウチはロック禁止と言ったのがわからんのか」
( ゚д゚ )「それは父さんの考えだろ。僕はロックがしたいんだ」
('A`)「ダメだ、ロックなんかやる奴はロクデモナイ人間にしかならない」
( ゚д゚ )「…そんな事ないやい」
('A`)「本当だ。俺が見て来た人間はみんなそうだった。
だからミルナ、お前もアニソンを聞くんだ。
そうすれば父さんみたいに損のない人生を歩く事が出来る」
( ゚д゚ )「…でも僕は」
('A`)「無駄口無用!父さんは今から熟女でシコるから早く出て行きなさい」
そう言うと父さんは、ビデオ片手に無理矢理僕の部屋まで背中を押していった。
部屋へ連れられている最中、母さんに変態だからと逃げられて
早く帰ったかと思えばシコる事しか能のない父さんにだけは言われたくないなと思った。
居間へ戻る父さんの曲がった背中からは
まだ四十代だというのに人生オワタと主張されているように見えた。
( ゚д゚ )「ロックをやってなくてもアニソンを聞いていても
父さんみたいにだけはなりたくないな…」
そう呟きながら父さんの背中にあかんべぇをしてやると
机の隣にどっしりと構えたギターをケースにしまい
年季の入ったグリモルディの時計を腕に付けた。
両方とも、町のロックミュージシャンだったおじいちゃんの形見だ。
( ゚д゚ )「今日も一発かましてくるか!」
勝負服を身に纏った僕は
居間から聞こえる父さんの哀れな悲鳴をバックに夜の町へ出た。
数ヶ月前から路上ライブを始めていたけれど
毎晩のように閑古鳥が鳴く始末。
昼間にライブのチラシを配ったりしているけど
チラシを見る以前にこっちを見るなと言われて渡す事も出来なかった。
( ゚д゚ )「今日こそ誰か来ますように…ん?」
いつも僕が路上ライブをやるちょっとした広場には
ギターを片手に持った男二人が今から歌おうと準備をしている所だった。
姿が良く似た二人はまるで鏡に合わせたみたいだったけど
よくよく見れば一人はイケメンで、もう一人はビミョメンという違いがあった。
この数ヶ月、僕以外に誰かが路上ライブをやる事なんて見たことなかったから
驚く一方で嬉しくもなった。
(´<_` )「兄者、準備はいいか?」
( ´_ゝ`)「いつでも平気だ、弟者」
演奏を始めるらしく、僕の心はワクワクすると同時に近くで聞きたいと思ったけれど
昔から言われて来た"こっち見るな"という言葉を投げられるのが怖くて
少し遠い所から眺める事にした。
(´<_` )ジャンジャカジャンジャンジャーン
(´<_` )「尋ねよう 何故ころしたし」
(*´_ゝ`)「WHYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」
(´<_` )「わからない 何もかも」
(*´_ゝ`)「WHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAT」
(´<_` )「何が起きた カオスの先に」
(*´_ゝ`)「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」
(´<_` )「見よ あの現実を」
(*´_ゝ`)m9「LOOOOOOOOOOOOOOOOOOKING
FOOOOOOOOOOOOORR YOOOOOOOOOOOU」
( ゚д゚ )ビクッ
意味のわからない歌詞に首を傾げていると
いきなりビミョメンの人が僕の方を見ながら指差してきた。
しかもさり気なく人差し指を来い来いと動かしている。
取り敢えずここに来いと言われたのを理解した僕は
一番前を陣取って二人の演奏を聞いていた。
(´<_` )「我等最強 流石兄弟」
(*´_ゝ`)「YAAHOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」
( ゚д゚ )「……」
演奏が終わると二人は手元のギターを置いて僕の所へ寄って来た。
まっすぐ僕を見つめる熱い四つの瞳に吸い込まれそうになったけれど
持ち前の眼力で二人の視線に熱意で返した。
(´<_` )「聞いてくれてありがとう」
(*´_ゝ`)「よくぞ俺のテレパシーを受け取ってくれたな!」
(´<_` )「まさかあんな演奏を聞く人がいるとは思わなかったよ」
(*´_ゝ`)「俺の美声に惚れたんだろ。心配しなくてもわかってるから」
(´<_` )「ところでそのギターケース……もしかしてキミも」
(*´_ゝ`)「で、お代はいかほど頂けるんで……?」
(´<_` )「少 し 黙 れ」
( ´_ゝ`)「ぉK。把握」
( ゚д゚ )「……」
イケメンの方は弟者、ビミョメンの方は兄者と名乗った。
どうやら二人は最近になってから色んな所で路上ライブを始めたらしく
この場所でやるのも、演奏を聞いてくれたのも初めてだと言っていた。
(´<_` )「話の続きになるけど、ミルナ君もやっているのか?」
( ゚д゚ )「はい、ここで毎晩演奏しています」
( ´_ゝ`)「是非聞きたいものだな。聞かせてくれないか?」
( ゚д゚ )「はい! 少し待ってて下さい」
いそいそと準備をしてギターを構える。
兄者さんや弟者さんのように歌なんて歌えないから
ただギターを弾くだけの物足りない演奏。
僕は一度酸素を体内に補給すると、ゆっくりと指を弦上に滑らせた。
大好きなおじいちゃんから教えて貰った曲を指で奏でていく。
最初は緊張で思うように弾けなかったけれど
徐々に張り詰めた感覚が溶けていく様子が自分でもわかった。
実際はほんの数分だったけれど、今日はとても長かった気がする。
演奏が終わると兄者さんと弟者さんは文字通り盛大な拍手をしてくれた。
( ´_ゝ`)「何というか……凄いなミルナ君!」
(´<_` )「俺達もまだまだだな」
(*゚д゚*)「あ……ありがとうございます」
(*´_ゝ`)「ちょ、こっち見るなよ恥かしい」
父さん以外の人と目を見て話をするのなんて久し振りで
僕は兄者さんと身体をつつき合いながら、演奏を聞いてくれた喜びと
しっかり僕を見て話してくれる喜びを胸に噛み締めた。
そんな事を思っていると兄者さんは何かを思い付いたような笑顔で
僕の両肩を勢い良く掴んで来た。
( ´_ゝ`)「ミルナ君! もういっその事俺達三人でバンド組んじゃおうか」
( ゚д゚ )「……え?」
( ´_ゝ`)「ここで会ったのも何かの縁だ! 一緒にやればお互い頑張れるし
何より目指している場所は同じなんだ
さっきのミルナ君の漢気ギターに惚れた俺からの告白を受け取ってくれ!」
(´<_` )「兄者、いくらなんでもそれは唐突過ぎる」
( ´_ゝ`)「……バンドマンになればモテモテハーレム脱童貞展開が待っているぞ」
d(´<_`*)「ミルナ君、是非とも俺達とバンドを組まないか」
高身長な二人はどこか妄想に耽った様子で僕に詰め寄って来た。
いくら単純と言われている僕でも、会ってまだ一日も経っていない人と
いきなりバンドを組むなんて考えてないし、そんなの有り得ないと思った。
( ゚д゚ )「えっと……」
(*´_ゝ`)。о(wktkwktk)о。(´<_`*)
だけど、僕はこの二人は信じてみたいとも思っていた。
初めて話しをしてくれたからなのかもしれない
同じ夢を追い求めているからかもしれない。
明確な理由は存在していないけれど、本能がそう言っている気がした。
( ゚д゚ )「こちらこそ……お願いします」
(*´_ゝ`)「イヤッホホホホィ!」(´<_`*)
二人は腕を空へ突き上げてお互いの手を握り合っていた。
そうかと思うと今度は僕の手を強く握り締めて
これ以上ない位満面の笑みを浮かべながら僕の腕を激しく上下に揺らした。
(*´_ゝ`)「ありがとうミルナ君! 俺からの愛を受け取ってくれて」
( ゚д゚ )「え、何これksms展開?」
(´<_`*)「兄者落ち着け。でも嬉しい気持ちは落ち着けられないな」
(*´_ゝ`)「目指せ! 最強のバンドマンを!」
(´<_`*)「最高のバンドマンに」
( ゚д゚ )「……俺はなる!」
(*´_ゝ`)9m(*゚д゚*)9m「YAAHOOOOOOOOOOOOOO!!」m9(´<_`*)
天に向かって指差した先には一際輝く星があった。
それはまるで黒い逆境に飲まれながらもひたすらに
ここにいるよと叫んでいるみたいで
僕のようだなと思いながら手首に巻かれたグリモルディを見て小さく微笑んだ。
( ゚д゚ )「おじいちゃん、見ててね。僕頑張るから」
僕の長い演奏は、ここから始まった。
お題
・WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY
・バンドマン
・グリモルディ
・親父の背中
・で、お代はいかほど頂けるんで……?
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