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2024/11/26 05:34 |
( ^ω^)ブーンのワキガは死を招くようです

僕は彼女が大好きだった。
ちょっと照れ屋で気が強く、だがとても優しい彼女が。
僕はずっとずっと、彼女と一緒にいたいと思ってた。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ブーンwwwwwwwww」

その日、僕は夢見心地で有頂天だった。
思わず彼女とのデートの待ち合わせ場所に、六時間も早く来てしまって、
そしてあまりにもすることがないので、自分の中に満ちている喜びを身体で表現すべく、
ご機嫌なまま「ブーン」していた。

ξ゚⊿゚)ξ「……なにやってんの?」

六時間ほど経って――丁度、待ち合わせの予定時刻だ――彼女ツンが怪訝な表情を浮かべながらやってきた。
恐らく、僕が歓喜のあまりやっていたその行為の意味自体がよくわからないのだろう。

( ^ω^)「おっおwwwブーンしてるんだおwww楽しいからツンもやってみるといいおwww」

ξ゚ー゚)ξ「なによそれwww」

僕の返答にツンは笑った。彼女から見て僕は相当に可笑しかった様だ。
僕は彼女を笑わせることが出来たことにより、さらに嬉しくなった。

( ^ω^)「おっおwwwブーンだおwwwブーンwww」

僕は喜びの舞を踊った。両手を翼の如く広げ、今まさにこの地上から飛び立つかの様に。
僕は自身の中に満ちた喜びを表現する為に、ただただ無邪気に。

⊂ニニニ( ^ω^)ニニ⊃「ブーンwww」
プーン~~     ~~プーン


ξ ⊿ )ξ

――ドタッ

そうして、不意に背後から音が響いた。
それは地面と何かが衝突した様な鈍い音だった。
音が聞こえた方向は、つい今しがたツンが居た場所だ。

何だろう? 僕は大して考えることもなく振り返った。

( ^ω^)「お? ツン?」



ξ゜々。)ξ ……




( ^ω^)「し……死んでる……」






( ^ω^)ブーンのワキガは死を招くようです






(,,゚◎゚)「ふむ、死因は異臭による呼吸器官の破壊か……。
いや、どんな臭いだよ、半端ねぇな……」

僕の聴取を担当した刑事さんは、ガスマスクを装着しながら手元の書類に目を通す。
その向かい側で、僕は俯きながら沈黙していた。

(,,゚◎゚)「うーん、どうしたもんかな……。一応聞いとくが、故意に殺ったのか?」

(  ω )「そんなわけないですお。僕はツンが大好きだったんだお。
僕が彼女を殺す理由なんて、微塵もありはしないお」

僕は刑事さんの問いに嘘偽りなく答える。本当に、ツンを殺すつもりなんてなかった。
むしろ、そんなこと考えもしなかった。だが、ツンは実際に死んだ。それならば――

(,,゚◎゚)「じゃあ、不慮の事故ってこと……」

(  ω )「――刑事さん、故意とか不慮とかそんな確認はどうでもいいんですお。
事実、僕はツンを殺した。だから、早く僕を裁いて下さいお。ツンを殺した僕を早く……」

僕は彼の言葉を遮るように言葉を発し、そして懇願した。
早く、早く。あまりにも罪深い存在な僕だ。

今すぐにでも罰を受けなければ、僕は罪悪感に押し潰され気が狂いそうだった。

(,,゚◎゚)「悪いが、起訴して実際に判決を下すのは俺の仕事じゃねぇ。
俺の仕事は、起こっちまった出来事の事実確認と処理。
ただそれだけだ」


刑事さんの返答は、僕にとってはあまりにも無慈悲だった。

(,,゚◎゚)「まぁ、仕方ねぇよ。誰もワキガの臭いで人が死ぬなんて思わねぇ。
……こう言っちゃなんだが、彼女は運が悪かったとしか言い様がねぇな」

この人生の結末が、彼女にとっては与えられた運命だったんだと、刑事さんはそう宣った。
だが、そんな言葉で誰が彼女の死を納得するだろうか? いや、誰もしないだろう。
僕だってしない。する筈がない。

(  ω )「僕がツンと出逢わなければ良かったんだお……。
そしたらツンは今頃……」

(,,゚◎゚)「……よせ、あまり自分を責めるな。それに“たられば”は無意味だ」

(-◎-)「……ギコ」

刑事さんがそう声を掛けたと同時に、取調室へ老け込んだ刑事が入ってきた。
なお、この人もガスマスクを装着している。

(,,゚◎゚)「あ、ヒッキーさん。どうなるんですか、コイツの処遇は?」

(-◎-)「……これだ」

そう言って、もう一人の刑事さんはあるものを二つ机の上に置いた。

(,,゚◎゚)「成る程、こいつで再発防止ってことかい……」

そう呟き刑事さんは立ち上がった。
そしてその置かれた二つのあるもの――消臭ポットを僕に差し出した。


(,,゚◎゚)「それ、脇に付けとけ。それで釈放だ」


僕はトボトボと帰路に着いていた。

一体、どうなっているんだこの世の中は。仮にも僕は人を一人殺したというのに。

だというのに、誰も僕を裁かない。
だというのに、誰も僕に罰を与えない。
だというのに、誰も僕の罪を罪として認めてくれない。

なんなんだ、この世界は。
人を一人殺した結果が、無惨にも彼女の命を奪った結果が、脇に消臭ポットだぁ?

巫戯けるな。
何が再発防止だ。何が簡単消臭だ。何がラベンダーの香りだ。

警察よ、こんなことでは職務怠慢だぞ。
検察も裁判所も仕事しろ。働け税金泥棒。
僕は、大いに欺瞞だ。

巫戯けるなよ。
誰か逮捕状持ってこい。この腕に固い固い鉄の錠を嵌めろ。

僕は刑法第199条に抵触している筈だ。
監獄にブチ込め。人殺しだぞ僕は。
穢れに穢れ過ぎて、最早どれ程の償いをしても浄められない程に罪深い人殺しだ。

誰か僕を責めてくれ。そして裁いてくれ。



あわよくば、殺してくれ。



(  ω )「……お」

その刹那だ。不意に僕に天恵が訪れた。
それは、まるっきり穢れきった者の頭でしか思いつかない様な、悪魔的発想。

なんだ、裁いて、貰いたい、なら、そんなのは、簡単、じゃ、ナイ、カ。


(  ω )「……そうだ、そうだお」

マタ、誰カヲ、殺セバ、良インダ、今度ハ、故意、ニ。


(  ω )「そうすれば……僕は……裁かれる……」

そしてwww僕にwwwはwwwそのwww手段がwwwあるあるwwwww
うはwwwwwwやべぇwwwwみwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwww


三⊂ニニニ( ^ω^)ニニ⊃「ブーンwwwwwwww」
プーン~~     ~~プーン


消臭ポットwww破棄wwしてwwww
僕はwwwkskwwwkskwwwブーンwwwwwwwww


駆けるwww風よりもwww速くwww光の速度でwww
いやwwwwwwそれ無理スwww
だけどwwwそのくらいのwww気概を持ってwwwね?wwwwww

今www僕の脇をwww運悪くwww通行人wwwがwww通り過ぎたwww
えっとwwwwww彼?www彼女?www

どっちでもいーやwwwwwwwww
とりあえずwwwその人www僕が去った後にwww倒れたwwwwww

うはwww一緒だwwwツンの時と同じ音したwwwwww一緒一緒www
テwwwラwwwデwwwジwwwャwwwヴwwwwww
僕はwwwまたwww人をwww殺しwwwっうぇwwwwww

だがwwwまだ足りないwww足りないぞwwwwwwwww
また消臭ポットでwwwいやwww今度は消臭スプレーかも知れんwwwwww
どっちにしてもwwwwwwまたそんな怠慢wwwwwwで見過ごされてしまうかもwwwwww

足りwwwwwwないwwwもっともっとwww
僕をwwwもっともっとwww確実に裁いてwww貰うにはwww
もっともっとwww沢山のwww人のwww死がwwwもっともっとwww必www要wwwだwww

三⊂ニニニ( ^ω^)ニニ⊃「ブーンwwwwwwwwwwwwwwwww」
プーン~~     ~~プーン

僕は死を振り撒きながら更に加速する。
その穢れきった身体に、死の翼を広げて。

死のwwwwww翼wwwwwwwww厨臭ぇwwwwwwwww
いやwwwwww実際臭いのはwwwwww僕の腋wwwwwwっうぇえwwwwww


……………ふぅ……何やってんだ僕は。

あぁ、さて、これは僕の知ることのない事実なのだが。

その日僕が犯した罪は、史上最悪の個人による無差別殺人として、
連日メディアに取り上げられ、報道された。

死者四十三人。重軽傷者はその約二倍。
僕は誰しもが認めざるを得ない、列記とした歴史的な犯罪者となった。

なお、犯人であるは僕は犯行途中、道路に飛び出し、
その時、偶然通りかかった乗用車に牽かれ、死亡したそうだ。


――僕は裁かれたのか、どうなのか。


今は亡き僕自身には判らない。






( ^ω^)ブーンのワキガは死を招くようです-Fin-


お題
・死のワキガ
・光の速さで
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2008/06/13 23:05 | Comments(0) | TrackBack() | 総合短編

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