夜。
今夜は珍しく、俺は自分の部屋でおとなしくしていた。
从 ゚∀从「………」
だが、普段なれないことはするもんじゃない。と、もうそんな後悔をしていたのはやぶさかでもない。
从 -∀从「……」
ただただ、今はアイツが帰ってくるのをおとなしく待つしかない。今日は何故か、俺の〝狩り〟に一緒に付いてきてくれるらしいのだから。
从 ゚∀从「だが、遅せぇ!!」
アイツと言えばアイツなんだけれども……でも、名前を言うのはなんか癪なので、言いはしないし、思い出したくもない。
だから、あの、また何食わない顔で俺の部屋に訪れたら、ちょっとした愚痴と共に言い放ってやる──と心に決め、それから約束の時間から一時間過ぎている。
その時から、俺のそのちょっとした考えは強制的に凶悪さを増して、今や『名前とともに爪で顔の皮を剥ぐ』という惨殺計画にまで発達していた。
从#゚∀从(なんだよ…忘れてるわけじゃねぇよなぁ…)
ちらちらと、いつかかってくるかと携帯を見やるが、何時にまでたっても、その携帯に光が灯ることはなかった。
从#゚‐从「むー……これでもし来なかったら、明日、学校でとっちめてやる…」
そう呟いて、俺はベットの上に勢いよく転がる。ぼふっ、と頬に毛布の感触があたった。
从 -∀从「早くこいよ…ばかやろう……」
俺は毛布に顔を埋め、軽く瞼を閉じる。当然、視界は暗闇となり、ならって視神経が働きを停止する。それに変って頭の中の脳がゆっくりと回転を始めた。
動き始めた脳内は、なぜか俺の過去の情景を瞼の裏に浮かび晒し始め、そして初めに写ったのは───奇しくもアイツの顔だった。何食わない顔で微笑んで、俺のことを見つめていた。
──これは、初めてアイツが〝笑った〟ときのだろう。その暗闇に浮かぶアイツの姿は、まだ背が俺よりも小さかった。
この頃のアイツは、その小さな体躯と女のような容姿からで、周りからは可愛い可愛いとチヤホヤされていたのを覚えている。
正直、当時の俺から見てもそのアイツの可愛いさは認めていた。だって本当に可愛い。何をするにも、そのアイツの行動一つ一つが見る物すべての人々をを犯罪者予備候補にさせた。
从 -∀从(………)
しかし俺は、そんな中で、アイツの可愛いさを認めていたが──決して〝納得〟してはいなかった。
だって、それは〝アイツ〟だったから。
俺の幼馴染みで、物心付かない頃から一緒にいて、どんな奴よりも時を共にしたといってもいい。もう一心同体といっていい程……いや、それは言い過ぎか。
とにかく俺は、アイツを信用していなかった。どんな相手にもニコニコ笑って、皆に笑顔と愛くるしさを振り撒いてるアイツが──素直に〝裏〟の考えも無くやってんのかと。
───カリリ
从 -∀从「───ん……」
ちょっとばかし昔を思い出していたら、半分寝入っていたらしい。軽い眠気の元、少し意識がぼやけていた。
从;゚∀从「あ、やべ…もしかして電話とかきてたり…」
それほどまで深い眠りではなかった。何かの拍子に起きたと思い、ケータイの着信履歴を確認する。
从 ゚∀从「……」
从 -∀从「はぁ……」
来てない、か。と小さくため息をついた。
ため息は幸せが逃げるから駄目。とよく聞くが、残念ながらこれは俺の色々もう諦めたときの癖であって、たいして気にはしてない。何度こんなため息したと思ってんだ。
从 ゚∀从(そしたらとっくに幸せライフはゼロよ……ってぇーの)
起こした上半身を、また再度ベットへと沈める。今度はもう本格的に寝ようと決めて毛布を被り、くるりと、くるまる。もうやめ。もうアイツは今夜こない。だから狩りもしない。
从#-∀从「おぼえとけよ……アイツ…」
最後にと怨みこもった言霊を残し、煮えたくるような怒りを押え込んで、ゆっくりと瞼を────
───カタタ
…と、闇夜に鳴ったひとつの音。半ば怒りと眠気に沈みかけた意識を引きずりだす。目も開けずに窓の外の闇に意識を向けた。
从 -∀从(……やっぱなんかいるな…)
自然と、俺の体の節々が、ギシギシと音をたて軋み始めた。周りを取り巻く空気が、まどろっこしい〝何か〟の気配を漂わせる。
从 -∀从(フン……自棄に露骨だな)
──だがそれも、俺にとっては馴れしたんだ一つの〝常識〟だった。さもなければ、それが俺の普通にあるという、ただただ息を吸えばいつでも口に入るだけのこと。
从 ゚∀从(〝殺気〟─……)
今や、濛々と立ち込める煙のように、肌をつんざすような殺気が部屋の隅々まで広がっていた。
从 -∀从「すーはーすーはー…」
俺はそれを感じつつ、毛布の中でいくつかの息を繰り返す。大丈夫、鼓動の回数と呼吸は通常。何時でも行動可能。
从#゚∀从「……ふんっ!」
そう確認した瞬間、急激に殺気が爆発するかのように膨大した。それを引き金に勢いよく毛布を蹴り跳ばし、ベットから転がり落ちる。
『かちゃっ』
それに連なって、妙に甲高い音が部屋の中に響いた。
从 ゚∀从「……」
転がる線上先での形で、片膝を床に付けしゃがむような体制で、音がなった方へとすぐさま視線を向けていた俺は、
从 ゚∀从「……開いた」
そう、呟いた。
そうだ、その通り。窓の鍵が開いていた。さながら通常に開けたように。先程まで上を向いていた取ってが下方にある。
从 ゚∀从「………え?それだけ?」
確かに、それだけだった。なんらアクションは起らない。一人でに開いたという所が多少、不思議だと言えるがまぁそれだけだ。だが、ただ、鍵が一人でに開いただけで終わる?たったそれだけで?
从 ゚∀从「んなワケねぇ」
当然。だって、殺気は今も過去も変っていないから。
『がららら』
窓が開かれた。やはり一人でに、勢いよく。だが開かれた窓の外には、その窓を開けた当事者はいない。ただただ闇夜が鎮座しているだけ。人影ひとつない。当たり前だ。だってここの部屋は二階だから。当然、窓の外には足場となるものはないはず。
『バリン!!!』
从 ゚∀从「………」
途端に部屋の電灯がはぜる。ショート。光が消え、暗闇が部屋を覆い潰す。視界が黒一色に染まる。
从 ゚∀从「──ハッ!目隠しかッ?意味ねぇよ!」
俺は勢いよく駆け出す。部屋のドアへと。ちょうど窓とは正反対の位置にあり、背中を見せる事になるが仕方ない。
『ビュッ!!!』
何か、暗闇の中で空を切る音が響いた。それは直ぐ背中からだった。
从*゚∀从「空振ったなアーホ!!!」
俺は後ろも見らず叫ぶ。そしてすぐさまドアを蹴破り────丁寧に手でドアを閉めた。
从 ゚∀从「──よしっ!」
そして、そのまま俺はドアの前に立つ。ドア越しに何か足音が普通に聞こえるが、気にはしない。黙ってドアの前に立ち、先程までいた部屋側の方向へ視線を向けたままにする。
从;゚∀从「……」
ドアノブを手のひらに収めながら、俺は小さく唾の飲み込んだ。
そしてドア付近に、足音が近付き始め───
从#゚∀从「はいっ!ドーン!!!!」
俺は思いっきりドアを蹴っ飛ばした。
『───!?』
轟音をたて蝶遣いを破壊しながら吹っ飛んだドアは、闇に溶け込むようにあった〝何か〟にブチ当たり、その勢いのまま反対側の壁と吹っ飛んだドアとでハンバーグ。
ドドドンッ!!!とまるで漫画のような効果音の元、さっきまでの浮立つような殺気はフワリと消えた。
从*゚∀从「いっちょあがり!」
そして、今やすっきりとした部屋の入口から中の様子を伺う。
从 ゚∀从「おぉ…我ながら素晴らしい…」
暗い視界に映る蹴飛ばしたドアは、もみくちゃにして丸めたティッシュ状態になっていた。
从 ゚∀从「……ん?」
完全にスプラッタになっただろうと思っていたが、ぐらぐらと丸めたティッシュは揺れていた。
从 ゚∀从「まーだ生きてんのか」
そう呟いた途端、
『──キンッ!』
丸めたティッ…いや、蹴飛ばしたドアが、一瞬似して細切れになる。
从 ゚∀从「うおっ!?」
その細切れとともに、目の前の壁が袈裟切りのように音をたて床に落ちた。
从;゚∀从「やっべ」
暫撃が飛んでくるって聞いてねぇよ!と一人で何やら突っ込んでみるが、たいして状況は変りはしない。
从;゚∀从(ここは何かと動きにくい…ひとまずは外に)
『キンッ!キンッ!キンッ!』
从;メ゚∀从「うぉぉおおおお!!!!」
頬を何かが撫でていったが気にはしていられない。俺は廊下の突き当たりにある窓まで駆け寄り、急いで開け放ち、窓枠に足をかける。
そして、窓枠を勢い良く蹴りだし空に身を投げた。
从;メ゚∀从「ハイン様ばんさぁぁぁあい!!!」
──当然、さっきも言った通りここは二階である。確かに冗談じゃないすまされないぐらいの高さはあった。ましてや勢い良く飛び降りてる時点で、多少でもなくても怪我をする可能性は大だ。
从メ゚∀从「だがねっ!!!」
俺は、上手く着地できると信じていた。怪我もせず、しかも完璧なるフォームで。
∧_∧
从*゚∀从「にゃははは!!!」
──だって、猫だから。
───スタン。と、音もなくアスファルトの地面に着地する俺。
从メ゚∀从「俺様、最強!」
意味もなくポーズを取って、自分の華麗なる手捌きに酔いしれる。なんて凄い俺。もう自分自身、そんな自分に惚れちゃいそう!
『キンッ!』
足元のアスファルトが抉れ、破片が飛び散った。
从;メ゚∀从「ちょwwwwぱねぇwwww」
俺は(逃げるかのように)、一目散に駆け出していった。
※
从;メ゚∀从「はぁ…はぁ…」
とにかく走れるだけ走った俺は、もう自慢の体力も程々にしか残っていなかった。
从;メ-∀从「はぁー…」
膝に手をつき、腹の底からため息をつく。少しは落ち着こう。そう決めて、今一度、ため息をつく。
从メ゚∀从「こ、ここは…」
分け目も振らず走って来たので、いま始めて周りの景色を見渡した。
从メ゚∀从(近所の公園…か)
ここは自宅近くの自然公園だった。木が多く植えられており、軽くジャングル化している場所もあるという近所では名の知れた公園だった。
从メ゚∀从(自宅からそう遠くない距離だな……)
テキトーに走っていたから、何度も同じ場所を走っていたんだろう。意外と近い場所だった。
从メ゚∀从「……だったら…そろそろ嗅ぎ付けてくるな」
そう呟いた途端、
『こんにちわ、ガール』
从メ゚∀从「…!」
すぐ側の林の影から、話かけられる。
从メ゚∀从「…でてこいよ」
俺は、低く唸った。
だがそんな俺にたいして、影は、
『おやおや、もう鬼ごっこはお終いでしたか。これは失敬』
と気安い物言いで、ゆっくりと木の影から姿を現した。
それは黒い紳士服を着て、これまた黒いシルクハットを被ったダンディなお方だった。
(´・ω・`)「はじめまして、ガール。私の名前はショボン。しがない〝獣魔〟の一つであります」
そういった彼の挨拶も完璧だった。そして何気ない優雅な動作も洗礼された見事な身のこなし。
(´^ω^`)「ニコッ」
そして最後の紳士な笑顔もこれ完璧。
从メ゚∀从「キメェwwwwwwww」
(´・ω・`)「なん…だと…」
予想以上に俺の言葉に傷ついてるショボンをよそに、俺は素早くショボンを観察する。
从メ゚∀从「なんつーかな……狂えば狂うほど、人間味が増してくるって本当みてぇーだな」
と、俺の言葉に、ピクリと反応したショボン。
(´・ω・`)「それはそれは…ちょっと誤解がありますよ?ガール」
从メ゚∀从「何がだ」
ショボンはその場で、くるりとステップを踏む。楽しそうに──楽しそうに。
(´・ω・`)「ふふっ…我々〝獣魔〟は、進化ゆえに狂喜を手に入れるんです。さすれば力を求めるものは、いずれ狂喜を自分の物とする」
そう言うと、ショボンは我が身を大事そうに腕に抱いた。
从メ゚∀从「ハッ!たいしてかわってねーよ!」
と俺は言い放つ。
(´・ω・`)「それは残念」
『キンッ!』
从;゚∀从「なっ──」
ザシュ!
目の前が真っ赤に染まる。あ、やばい。やられた?斬られた?
从メ ∀从「──…」
从;メ゚∀从「つはぁっ!?」
ぼたぼた…と額から血が流れ落ちる。どうやら手加減されたらしい。
从#メ゚∀从「テメェ…」
(´・ω・`)「一つ質問が」
今更ながら、落ち着いた口調でショボンは言葉を繋げる。
从#メ゚∀从「あぁっ!?テメェんなこと言ってるヒマあると思ってんのか!?」
(´・ω・`)「そこを承知でのお願いです」
駄目だコイツ。殺してやる。
∧_∧
从#゚∀从「ハァァッッ!!!」
──体に力が漲る。脳髄が熱く、熱く、熱を持ち始めた。
∧_∧
从#゚∀从「死ねぇぇぇぇぇええええ!!!!」
突出す右手。そこに、力を込めた。
(´・ω・`)「…」
ショボンは何もせず黙って俺をみるだけ。好機ッ!
∧_∧
从#゚∀从「ハイン様特製!!!ねこまたフレェイム!!!!」
ごばぁっ!!!という不可解な効果音の元、右手から〝白炎〟の炎弾が発射される。
(´・ω・`)「…おぉ」
ショボンは感嘆の声をあげた。
(´・ω・`)「いやはや…すば──」
ドゴン!!!
──打ち出された白き炎弾は、発射された位置から一寸狂わずに、ショボンの顔面へと衝突。爆発を起こす。
∧_∧
从#゚∀从「…」
もうもうと辺りに立ち込める。爆発での砂埃。
从メ゚∀从「やったか…?」
ネコミミモード改め、辺りを見渡す。……だが奴の姿は何処にも見当たらない。
从メ゚∀从「……逃げたのか?」
(´゚ω゚`)「ばぁ!」
从;メ゚∀从「うぉっ!?」
後ろから勢い良く抱き付かれた。
从;メ゚∀从「は、はなせ…!この…ッ!!」
(´゚ω゚`)「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
ショボンは狂ったように笑い声を上げ、俺を後ろからはがいじめにする。
从;゚∀从「へ、変態がッ!!離しやがれッ!!!」
俺はそのままの体制から、後ろに向かって頭突きをかませた。
(´・ω・`)「つまり鼻っ面破壊行為ですね。わかります」
だがそんな行動も普通に読まれており、首を動かすだけでいとも簡単に俺の頭突きを避けたショボン
(´・ω・`)「寝てろよ」
──急に、視界がぶれた。
从メ ∀从「かはぁっ…!?」
気がつけば、頬に地面の感触。そして全身を巡る激しい痛み。
从メ ∀从「てめ…」
──投げ飛ばされた。それはそんな単純な攻撃だった。
(´・ω・`)「話を聞かないからそうなるんですよ?ガール」
──ショボンの何事もないような表情で淡々と喋る様は、今の俺には異端にしか見えない。
从メ ∀从(やべぇ…俺…)
たんに地面に向かって投げられた程度で、さほど命には別状はない。だが俺は〝そう〟思えてしがたなかった。
──それは流れ。全ての物事を取り巻く、時間のような、運でもあるようなもの。それは時として俺を救うこともあるだろうが、しかし、その逆に俺を殺すこともある。
从メ ∀从(んでもって…今は見事に──だ…)
どう考えても、いや、相手への反撃の余地はあるはず。──だが、どうしても俺の体は動いてはくれない。
从メ ∀从「はは…」
从メ ∀从「…はは……俺って一体何なんだろうな……」
自虐的に笑顔を浮かべ、俺は笑った。
(´・ω・`)「どうかされましたか?」
ショボンがいつのまにか出したステッキをクルクルと回しながら、にこやかに話しかけてきた。
从メ ∀从「うんにゃ…ただたんによ…」
从メ゚∀从「──俺は、ここには意味ねぇんだなって思ってな…」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「意味が、ない?」
从メ゚∀从「…そうだ」
从メ゚∀从「だってそうだろ?」
そうだ。いまからの流れは、俺は〝必要ない〟。なぜなら──
「ブーン──!」
『棚からぼたもち。とは、こういうことだおね』
──それは現われた
(;´・ω・`)「なっ──」
从メ-∀从「おせぇよ…あほんだら…」
──闇を従えて。
「ほほぅ、君は命は〝二つ〟で〝一つ〟かお」
(#´゚ω゚`)「黙れボケェェェエエエ!!!!」
──赤き〝血〟を求め。
( ^ω^)「ハイン、家に帰るお」
从メ゚∀从「黙れピザ」
終わり
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