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2024/03/28 18:48 |
『青い鳥のようです』

    『青い鳥のようです』


    ζ(゚ー゚*ζ「ひさしぶり、お姉ちゃん」

    ξ゚⊿゚)ξ「ひさしぶりね、デレ」

    ζ(゚ー゚*ζ「最近ずっと来てくれなかったねぇ。
          仕事、忙しいの?」

    ξ゚⊿゚)ξ「まぁね」

    ζ(゚ー゚*ζ「高層ビルに囲まれたオフィス街で颯爽と働く
          お姉ちゃん! ……格好いいけど、デレは
          あんな所にいたくないなあ。息が詰っちゃう」

    ξ゚⊿゚)ξ「……まぁ、確かにアンタには無理でしょうね。
         で、何なの? 用事があるとか何とか」

    ζ(^ー^*ζ「えへへー。実はお姉ちゃんに見せたいものが!」

    朗らかに笑った妹は「じゃーん!」と口で言いながら
    何かを私に差し出した。
    それは。


    ξ゚⊿゚)ξ「……鳥篭?」

    ζ(゚、゚*ζ「鳥篭だけど鳥篭じゃなくて……ほら、鳥!」

    ξ゚⊿゚)ξ「……鳥? 飼ったの?」

    ζ(゚ー゚*ζ「うんうん。これはねえ、ただの鳥じゃないの。
          幸せの青い鳥なんだよー!」

    ξ゚⊿゚)ξ「……メーテルリンク?」

    ζ(゚、゚*ζ「むー。童話じゃなくて、本当に!」

    ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ何で空っぽなのよ、鳥篭」

    ζ(゚ー゚*ζ「それはねー、今お散歩中だからです!」

    ξ゚⊿゚)ξ「お散歩中って……大体、何でその鳥が
         幸せの鳥だなんて解ったのよ」

    ζ(゚ー゚*ζ「えー、自分で言ったんだもん。それに青かったし」

    ξ゚⊿゚)ξ「……そう」

    元々夢見がちな所があった妹だ。今更この位の事じゃあ驚かない。


    ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、幸せの青い鳥がいて良かったじゃない。
         幸せなこと続きなんでしょ? 羨ましいわ」

    ζ(゚ー゚*ζ「でも、お姉ちゃんだって幸せでしょ? 青い鳥がいなくたって」

    ξ゚⊿゚)ξ「幸せ……」

    デレに言われて思わず我が身を振り返る。

    仕事は順風満帆……とは言いがたいけれど、それなりに
    軌道に乗っている。
    頼りないへちゃむくれだけど、優しい恋人……とも言えない人もいる。
    下らない話や、真剣な話を出来る友達もいる。

    そんな普通の生活をそうだと言うのなら。

    ξ゚⊿゚)ξ「……まぁ、そうかもね」

    ζ(^ー^*ζ「でしょう? よかったあ。幸せじゃないと困るもん」

    ξ゚⊿゚)ξ「……困る?」



    デレの物言いが僅かに引っかかって聞き返すと、彼女はうふふと
    笑って鳥篭を掲げた。
    そうして白く細い指で、ゆっくりと鳥篭の扉を上げていく。
    金属の軋む、きいいと甲高い音がゆっくりと静かな部屋に響いて、
    私は途端に不安になった。

    ζ(゚ー゚*ζ「そう……困るの。ねぇお姉ちゃん。
          デレ、嘘ついてたんだ。ごめんね」

    何を、何を言っているの。この子は。

    ζ(゚-゚*ζ「青い鳥はね、散歩になんか行ってなかったの。
          ずーっと、この中にいたのよ」

    空っぽの鳥篭の、扉が上がりきった。
    中にいるとデレが言った鳥篭は、未だ空っぽなのに。

    ξ;゚⊿゚)ξ「で……デレ?」

    ζ(゚-゚*ζ「ねぇ、お姉ちゃん。青い鳥がね、言うの。毎日毎日。
         『君からはお腹一杯食べちゃった。だから、次の食べ物を探してよ』
          って」

    ξ;゚⊿゚)ξ「な、何を……」



    ああ、解ってしまった。
    デレの飼う青い鳥は。

    ζ(^ー^*ζ「デレはもう、この子にご飯をあげれないの。
          ねぇ、お姉ちゃん。幸せなんでしょう?」

    ζ(゚∀゚*ζ「この子に、ご飯をあげて?」



    幸せの鳥なんかじゃない。



    幸せを 食 べ る 青い鳥なのだ。





    ξ;゚⊿゚)ξ「ひ……!」

    部屋の中に鳥はいない。鳥篭も空っぽのまま。
    だけど、私は恐ろしくて。
    鳥が――笑顔のデレが、恐ろしくて。
    空気を小さく揺らす程度の小さな悲鳴を上げて、デレに背を向けた。

    逃げなくちゃ。
    馬鹿馬鹿しい、いつものデレの空想じゃない。
    そんな考えは浮かばなかった。

    ただ、逃げたかった。

    ζ(^ー^*ζ「だめだよ、お姉ちゃん。逃げたってだめ。
          幸せの青い鳥はどこまでもおいかけるよ。
          だって、お姉ちゃん、幸せなんでしょう?」

    ξ;゚⊿゚)ξ「ッ――!」

    たかがワンルームなのに、玄関までが酷く遠い距離に感じる。
    もつれる足に舌打ちしながら、それでも私は玄関を目指す。

    だけど、あぁ。

    ζ(゚ー゚*ζ「ほら。青い鳥はお姉ちゃんを気に入ったみたいだよ?」

    くすくすと、私の背中に向けてデレが笑った途端、何かの羽ばたく音がして。

    愕然とした私の目の前に、青い羽が一枚、ふわりと舞い落ちた。

終わり

  お題
    ・もう……喰ったさ 腹ァいっぱいだ……
    ・高層ビル
    ・青い羽
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2008/05/30 22:09 | Comments(0) | TrackBack() | 総合短編

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