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2017/10/17 10:48 |
ドクオは死にたがっているようです

その部屋は一目で人が住むような環境でないと分かる。
大小合わせて15のディスプレイが部屋を照らす。
一見して、その部屋は人が住む環境ではないと言えた。

('A`) 俺は酷く死にたがっている

('A`) それも、何よりも惨たらしい死に様を望んでいる

('A`) ホラー映画は好きだ。呪いやオカルトが大好物だ

窓も無く、扉が一つ、灯りは無い。よれたシーツのベッド。
冷蔵庫の隣にはゴミ箱の代わりなのか黒いビニールをそのまま置いている。
箱から出た無数の線は束ねられることなく部屋中を這い回る。

('A`) 俺は酷く不安定で人と付き合うことが出来ない

('A`) そんな俺でも歯車として社会に生きることは出来る

大小合わせて16の壁掛けディスプレイが爛々と部屋を照らしている。
男は小学校で使われているような机と椅子に座ってブツブツと何事かを呟く。
目は虚ろにディスプレイを覗き、手は頭と別の生き物が動かしているように働いた。



('A`) 死にたいと思うが自殺は出来ない。意思が足りないのではない

('A`) 自殺はしないのだ。自殺なんてつまらない。そこには俺のつまらない意思しかない。

('A`) ああ、俺は誰かに殺されたいのか。そうだ。殺されたいのか

彼は優れたトレーダーだった。精神を患ってはいたが、それ故にか、特異な感性を持っていた。
それはとても優れていて、彼にお金を出そうという人は幾らでもいた。
彼は狂っていたが、仕事に置いては誰よりも正確だった。

('A`) 良くわからないものに不条理に殺されたいのだ。

('A`) 俺の心のもやさえ消してくれる何かに不条理に殺されたいのか


5つ、ディスプレイの電源が落ちる。彼の手が止まる。
そのほかのディスプレイにはニュース番組が流されている。
音量はとても小さく、彼が聞き取れているとは到底思えない。

彼は机から立つと、ベッドの上に倒れこんだ。
呪詛に似た言葉を漏らしつつ、数秒のうちに寝た。
輝かしい朝は彼には無い。仄暗い夜と機械的な光が彼の全て。

――ごとり、と扉に何かが落とされる。
彼はその身を起こすとそれを拾いあげた。
喉の渇きを感じたが、それよりも部屋に入れられた物への興味が勝った。

('A`) ああ、待ってたよ

('A`) 俺を殺してくれるかも知れないもの

('A`) ずっと待ってた。



彼はオカルトの好事家だった。金に飽かせて曰くつきの物を買った。
もっとも、トレーダーとしての彼と好事家としての彼を知るのは一部の人間だけだった。
好事家からは嫌われていた。

('A`) 裏切りはいらない

('A`) 誠意がないから

金に物を言わせるやり方がではなく、彼の気に入らないものは悉く壊されたから。
彼にとってオカルトは趣味でなく殺されるという目的だったから。
雰囲気ではなく。彼は本物を求めていたから。

乱暴に包みを破る。黒のVHS、ラベルは無い。
男の口腔が唾液と絡まって粘り気を出しをネチャネチャと音を立てる。

('A`) いい、ああいい良いぞとても良い

彼の目は爛々と輝く。

('∀`) 是は俺を殺してくれるかも知れない。

彼の手から離れたVHSがデッキに飲み込まれる。
一つのディスプレイに砂嵐が写る。


('∀`)

写る。

('∀`)

写る。

('A`)

砂嵐が写る。



('A`) ……ああああああああああ騙された! 騙した! 糞!

彼はディスプレイに繋がったままのデッキを持ち上げると地面に振り落とした。
線に引っ張られて、一つのディスプレイが壁から落ちる。絡まった線に引っ張られてもう一つが落ちる。
外装が大きく割れたデッキを彼は踏む。割れたプラスチックが足の裏に刺さる。

('A`) ああ、また裏切られた。誠実さが無いから偽者は嫌いなのに



('A`) ……


彼が落ち着いた時、異変に気付いた。液晶が割れて歪んだ画像が
砂嵐をまだ写し続けていることに、砂嵐が井戸に変わったとき

('∀`)

彼の笑みは無邪気で、とても気持ち悪いもので、嫌悪感を伴う吐き気を催させる。
それはディスプレイから這出る白く細い腕を見るときも変わらず。
黒い髪の毛で隠された顔が画面から音も無く這い出したときも変わらなかった。

川д川

いざ、不可思議なものに直面したときも彼の殺されたいという気持ちは変わらず。
むしろ、肥大化していく。目の前の不可思議に対する愛おしさは胸のに秘めれるものでは無い。

('∀`) ああ、待ってた。殺されるぞ、ああ。殺してくれる。強い意志で

液晶に割れた部分は通れないのか、それは上半身を出した状態でつっかえた。



('A`) ……

彼は落胆した。が、それが自分を殺すならと両手を掴みと画面から一気に引きずりだした。
異様なほど軽く、勢いよく飛び出したそれと地面に倒れた彼は、
胸に当たったそれの独特の柔らかさが、そいつが女であることを彼に理解させた。

('A`) ……あ?

彼の思っていたものと違う、人の温かさは高揚した気持ちを瞬時に冷ました。

川д川 あ

('A`) ちょっと待て

彼は彼女の手を見た。触ると折れそうなほど細い、白い。きめ細やかな肌はすべすべとして
彼は彼女の体を見た。人よりも小さな体、ちょっと大きめの白いワンピース
彼は彼女の顔を見た。綺麗な黒髪から覗かせる。薄い桜色の唇がある。

川д川


('A`) ああ、人だ。

('A`) 人じゃないか。ただの人だ。

彼は彼女の髮を片手で寄せる。本当に綺麗な目。吸い込まれてしまう。
彼は彼女の唇に触れる。申し訳なさそうに八重歯が出た。
彼女は照れくさそうに顔を背ける。

('A`) 可愛い人、とても愛おしいな

川д川










川д川('A`)





お題
・八重歯が可愛い
・川д川
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2008/06/03 01:41 | Comments(0) | TrackBack(0) | 総合短編

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