ξ;⊿;)ξ「うぅ……いや…いやだよ……」
( ^ω^)「ツン、大丈夫、僕は何もしないお。だから、泣かないでくれお……」
あたしは、夜が怖い。
その理由は、あたしの幼少期の心に影を落とした、実の父に起因する。
父は酷い酒乱だった。
毎晩毎晩浴びるように酒をかっくらっては帰宅し、そして母に暴力をふるった。
まだ子供だったあたしには分からないが、恐らく仕事も大してしていなかっただろう。
そして、その暴力の矛先は時々あたしにも向いた。
奴は、眠りについていたあたしを布団から引き剥がし、髪の毛を掴んで引きずり回した。
そうして、よくわからない理由であたしの頬を頭を腹を、
身体のいたる所を殴り、そしてまたよくわからない言葉を叫ぶ。
幼いあたしはその父に怯え、その日から毎晩毎晩、
父が帰って来る度に、また暴力をふるうのではないかと酷く恐れた。
当然の如く、それは完全にトラウマとなりあたしの心を蝕んだ。
あたしが小学校に上がる前に父は死んだ。
原因は飲酒運転の車に撥ねられての、事故死。
大きくなってその事を母から聞き、あたしは最低の父に相応しい最低の死に方だと思った。
その最低の父の遺していった負の遺産。夜を恐れる脆弱な心。
正直、幼少期の記憶は殆どないに等しいのだけれど、心はやはり当時を鮮明に覚えているようで、
大人になった今でも、実家を出て恋人である彼と同棲を始めた今でも、もう奴は死んだと理解している今でも、
また父が酒を飲んで帰ってきて、そしてまたあたしを殴るんじゃないかと、そう怯えてしまうのだ。
( ^ω^)「ツン…何かあったら僕が守るから。だから、安心してくれお……」
彼は、震え泣きじゃくるあたしを一つの布団の中で優しく抱きしめてくれる。
温もりが伝わり、冷え切った心を癒してくれる。不安に彩られたこの心が安心を持つ。
あたしは自分のことを酷く面倒な女だと、認識している。いい歳して一人で眠れない。
終いには怖がって泣いてしまう。そんな女の面倒なぞ誰が進んでみてくれるだろうか。
だが、彼は嫌な顔一つしない。そんな素振りなど億尾にも見せない。
あたしは、彼と出会えて良かったと、心から思う。
ξ;⊿;)ξ「……ブーン」
だが、あたしの心の中には、一つの疑念が浮かび上がってきていた。
彼から伝えられる温もり。これに対し、あたし自身は何を感じているのだろう?
恐らく彼は、あたしに対し恋人としての、男女としての愛情を向けてくれているのだろう。
だが、あたしはこの温もりに何を感じている?
愛し愛し合う、異性の恋人からの恋愛の情?
それとも、実は心の何処かで求めている、父親からの無償の愛。
――この抱擁の温もりに、そんな感情を抱き、覚えている?
彼は微塵の疑いもなく、真っ直ぐな愛情をあたしに与えてくれる。
だが、それに対するあたしは、彼の真意とはまた別のモノを与えられるそれに感じているのかも知れない。
そうじゃないと信じたい。でも、あたしはそれを確信することが出来ない。
何故ならあたしは、父からの温もりというものが、どういったものなのかを知らないのだから。
ξ;⊿;)ξ「ブーン……ブーン……!」
そんなことを考えると、彼に対し非常に申し訳が立たなくなり、
子供の古傷を負った弱いあたしは、また彼の胸の中で涙を流した。
お題
・AC(アダルトチルドレン)
タイトルがなかったのでそれっぽいのをこちらでつけました
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