台所の蛍光灯の明りが、チカチカと途切れ途切れな状態になった。
もうそろそろ寿命なのだろう。つまり、こいつは現在人間で言えば死に際なわけだ。
だというのに命尽きるその間際まで、自身の役目を果たそうと、
こうして、点いたり消えたりを繰り返しているわけか。
まぁ、生命が宿っている筈もない大量生産の無機物に、
そんな何やら哀愁漂う比喩を用いるのは、少し大袈裟かな。
ただこいつと比べて、今の自分って一体どうなのかな……なんて、僅かながらに考えた。
この東京の安アパートに引っ越して来て、約一年。とりあえず、田舎を出たいと考えて、
大した目的もなく、都会の大学を受験し、そして今ここに至るわけだ。
目的は日常生活を張り合いのあるものにしてくれる。
だが、それが何もない世間知らずで田舎者の俺は、
最初は物珍しく新鮮だった都会も、段々と夢も希望もない灰色の、
冷ややかなコンクリートジャングルにしか見えなくなってきていた。
そして何より、知らない土地に一人というのが、心細かった。
そんな要因で、いつの間にか学校にもあまり行かなくなり、
結果、留年。今年度も一年生をやるハメになった。
――で、そんな俺と比べてこの蛍光灯のなんと健気で逞しいことか。
こんな俺の生活を補助する為に、今までずっと頑張ってくれてたんだな、こいつは……。
('A`)「……今までありがとよ。お前の頑張りに恥じないように、
これから俺も心入れ替えて、頑張ってみるよ」
遂に光を失ったその蛍光灯に向かって、そう語りかける俺の姿は、
端から見たら凄く気持ち悪かっただろうなぁ……。
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コメント
無題
携帯で見ると、AAの顔が変になるのを直して欲しい
posted by ななしさん at
2008/06/08
13:58
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