どこか緩やかな雰囲気が流れる、そんな昼過ぎ。
午後独特の気怠さを漂わせる教室の中で、私は午後の一杯のティータイムを楽しんでいた。
川 ゚ -゚)(……まぁ所詮、缶コーヒーだがな)
くるくると、手の平におさめた缶コーヒーを軽く弄びながら、ゆっくりと窓際の席に座り込む。
そして窓から入り込む暖かな陽射しを、私は体全体で浴びて楽しむ。
川 ゚ -゚)「……はぁー」
こぼれた溜め息。思わず、っといった感じの溜め息だったと、自分の事ながら私もそう思う。
川 ゚ -゚)(……まだ来ないのか)
カラン…と、手放した缶が小さく鳴った。
川 ゚ -゚)(寝てでもして、待ってよう……かな)
んー。と腕を伸ばし、私はイスの背もたれへと背中を預ける。
──閉じた瞼の裏に、微かに映る暖かな光が、世の中は春の季節だと告げていた。
川 - -)「……」
──あの、季節だと。
あぁ──思い出す。
私の、過去。
悲しみと孤独に満ちたその過去を──なら少しだけ、子守歌代わりに紐解いてみようか……
川 ゚ -゚)はラブレターをあげたもようです
──それは幼少時代。
いつからか、私は人と接することを恐れいた。何処をどう間違ってそうなったのかは、今の私には分からない。
だが気付けば私は他人を必要以上に恐れ、無暗に人を近付けさせず、話しかけるものは出来る限り無視を押し通した。
そうすることで私は、無人の空間を作り上げていき──ついには〝恐怖〟から逃きれるこに成功したのだ。
川 ゚ -゚)(……)
嬉しかった。その言葉に嘘はない。長年、幼い頃からの恐怖に打ち勝ったのだ。並大抵の努力では出来ないことだった。
そして、私は気付く──
誰もいなくなった放課後。私は、一人でブランコを揺らしていた。
──それは小学生の頃だった。
この時の私は、『他人を拒絶する行為』に拍車をかけ、幼いながら何処かしらから覚えた悪口を使い、クラスメイト、先生、ましてや両親に対してまで罵詈雑言を吐きだしていた。
川゚-゚)(……)
──そうすることが、私にとって〝幸せ〟を手に入れるための条件だと思っていたから。
川゚-゚)「……」
だが──
川 - )「ッ…」
ゆらゆらと、夕焼けによって浮かび上がる影を見つめながら、私は思った。
川;-;)「……くるしい」
──と。
私は気付いた。
自ら望んだ行為が、またさらにそれが──〝恐怖〟を生み出していたということを。
川 - )(……)
またそれが──今までのように、簡単に取り返しが付かないことなのだとも。
川 ゚ -゚)「……」
私は更に歳をかさね、今や高校生となった。
あの頃に行った拒絶行為は、当然ながら年を上がると共に尾をひき、全くもって環境は変わらなかった。
更に、環境は酷くなったといってもいい。
まるでモーゼのように私の周りには人が近寄らず、クラスの誰もが私を謙遜し、枠から疎外した。
おはよう、と試しに言ってみようにも、たちまち奇異な目で見られ逃げられてしまうのが落ちだろう。
川 ゚ -゚)「……」
──いつしか私も、それが当然だと思い始めていた。
川 ゚ -゚)「……私は、強い。誰にも頼らず、従わず、自分で決めるんだ」
自分に言い聞かせるように小さく、小さく、呟く。
川 ゚ -゚)「それが私。強い強い強い……素直 空…だ」
「なんだお、それ」
川;゚ -゚)「……っ!」
それは放課後。
夕暮れ過ぎの薄暗くなった教室の中で、私は一人、残っていた。
対して用はなかった。ただ、親との気まずい雰囲気から出来る限り逃げたいのもあるのだけれど。
川;゚ -゚)「……」
学校に残ることは、私にとって苦痛の対象でしかなかったが、他にとどまる場所を知らなかった私は、やはりここに残るしかなかった。
川;゚ -゚)(…まさか、まだ人がいるとは…)
──だからこそ、これは私にとってそれは予想外だった。
「なんだお、それ」
声を聞く限り、多分、男子生徒だと思われる人は、同じ言葉を繰り返しつつ、ヅカヅカと薄暗くい教室に入り込んで来た。
「……」
そして、私の目の前で立ち止まる。
川;゚ -゚)(う…あ…)
私はいきなりのことで気が動転し、その状況についていけていない。
「君は……あ…」
川;゚ -゚)「え……」
男子生徒が、何かに気がついたように声を上げ──
「もしかして……空さん……かお?」
川; - )「ッ!?」
そう──自分の名前を呼ばれた途端、私はガクガクと膝から崩れ落ちそうになった。
───〝怖い〟
ただそれだけだった。
川 - )(わ…わたしは…何処が強くなった…?)
──強く、強く、強く。誰よりも私は〝それ〟を望んでいた。
自分が他人に押し潰されず、逆に押し返すぐらいに強くなる。
そんな風に決めたのは何処の誰だ?
川 - )(それは私…素直 空だ……ッ!)
だが、現実はどうだった?
たかが個人対個人で名を呼ばれた程度で、自分を無理矢理押さえ込んでいたタガが今にも外れそうじゃないのか?
川; - )(ち、ちがう…ッ!そんなわけ……っ…ない…!)
なにが違うのか。
現に私の体は、どうしようもないくらい震えているだろうに。それは──〝恐怖〟でだろう?
川 - )(あ……あぁ──……)
体の端から、ゆっくりと力が抜け出していく。
川 - )(あぁ…だめ……だ…)
もう体に力が入らない。既に手と腕からは感覚が伝わっていなかった。
川 - )(倒れ……──)
( ^ω^)「空さーん」
がしっ。と、なにやら力強い力に私の腕が掴まれた。
川 -゚)「え…」
( ^ω^)「さっきから黙ってどうしたんだおー」
川;゚ -゚)「…」
(;^ω^)「……なんか言ってくれお…」
掴まれた腕から、彼の手の平の熱が、じんわり袖越しに伝わってくるのを、感じた。
川;゚ -゚)「…君は」
( ^ω^)「?」
川 ゚ -゚)「…あ、あたたかいな……」
( ^ω^)「…」
川;゚ -゚)「あ、あれ…いま…私……なんて」
思わず、言ってしまった独り言。動転してるからってそれはないだろう。
( ^ω^)「空さん」
川;゚ -゚)「は、はははい……っ!」
急に真剣味を含めた言い方で、男子生徒は私に詰め寄ってくる。
ちょっとそれが近かったので反射的に少し間を開けようとしたが、キツく手を掴まれていて無意味だった。
( ^ω^)「…」
川;゚ -゚)「…」
どうしよう、なにがなんだかわからない。
( ^ω^)「空さん」
川;゚ -゚)「……はい」
あれ、思わずしっかりと返事をしてしまった。
(*^ω^)「それ、やっぱりラブレターですかおっ!?」
………は?
川;゚ -゚)「は……え?」
(*^ω^)「ふぉぉおおおお!!!マジかお!!??」
男子生徒は興奮したように顔を上げ、意識せずにだろうと思うが私の顔すれすれまで近付けてくる。
川;゚ -゚)「え…い、いや……なんで…?」
(*^ω^)「だってその手に持ってるの、どうみてもラブレターだおっ!」
手?男子生徒の言葉を聞き、私は掴まれている自分の手を見てみれば───あぁ、
川 ゚ -゚)「……これ、か?」
(*^ω^)「そうだお!それだお!」
嬉しそうに私の顔と手紙を交互に見つめる男子生徒。
私はその忙しなく動く男子生徒の瞳を見つめながら──
川 - )「違う」
そう吐き出すように呟いた。その途端、男子生徒の気配が一瞬、固まる。
( ^ω^)「……え?なんですかお?よく聞こえ、」
川 ゚ -゚)「違う。といっている」
私は、掴まれている手を勢いよく振りほどく。なんら抵抗もなく、腕は束縛から逃れられた。男子生徒は何も言わない。
川 ゚ -゚)「これはな」
私はさっきまで心にはこびった恐怖を押し潰し、無表情という感情を顔に浮かび上がらせる。
川 ゚ -゚)「──私の悪口を書いてるメモだよ」
ヒラヒラと、見せつけるように男子生徒の目線の前でメモを揺らした。
川 ゚ -゚)「お前だってこのクラスの人間だ。それぐらいわかるだろう」
私は、次々に言葉をならべていく。
川 ゚ -゚)「私は嫌われものだ。誰も私のことは気にはしないし、誰も私を好きではない」
相手が言葉を挟み込んでこさせないように。
川 ゚ -゚)「これは私の机の中に入ってたんだ。そして私はそれを捨てに行く所だ。当然、お前にラブレターをあげるわけではない」
──あぁ、言うのか……でも仕方ない。
川 ゚ -゚)「だから勘違いするな、このデブ。さっさとおうちにでも帰ってママの飯でも食ってろ」
そうだ、これが私だ。思い出せ。これが〝強い〟私なのだ。
そう言い切った私は、口を閉じ黙りこくって男子生徒を睨め付ける。
( ^ω^)「……」
だが男子生徒は、ただ佇むように私の視線を受け止める。
川 ゚ -゚)(……ッ)
そして私は気付いた。
───なんで笑っているんだ……?
( ^ω^)「空さん」
川 ゚ -゚)「……その気色悪い笑顔をやめろ」
( ^ω^)「空さん」
川 ゚ -゚)「気安く私の下の名前で呼ぶんじゃないピザ野郎」
( ^ω^)「…空さん」
川# - )「……」
ぎりり、と私の奥歯が鳴り響いた。
川#゚ -゚)「なんなんだ!?さっきから煩いんだよ!!その臭い息吐く口を閉じてさっさとこの教室から出て行けッ!!!」
誰かに聞こえようか構わず、私は腹の底から怒鳴り散らした。本当に怒りで頭が沸騰しそうだった。
( ^ω^)「…」
だが男子生徒は、あの笑みを浮かべたまま、一歩も動こうとはしなかった。
その光景が、更に私の怒りに火を付ける。
川#゚ -゚)「……そうだな、わかったよ。お前の頭にはわんさか虫が沸いているんだろ……?だからちゃんと人の話を聴けないんだなッ!!そうだろう!?」
( ^ω^)「…」
川#゚ -゚)「……だから、あんなおめでたい妄想が出来るんだろうなッ…!!なにが「ラブレターですかお」だ…ッ…死んでなくなってしまえ!!!」
( ^ω^)「ラブレターですお」
──男子生徒が、私が怒鳴り始めてから初めて口を切った
川#゚ -゚)「お前ッ……まだ、そんなことを……!」
再度競り上がる怒りに、また怒鳴ろうとすると、
( ^ω^)「絶対にラブレターなんですお」
私の言葉に被せるように、また更に、一歩。私に向かって足を踏み出す。
( ^ω^)「…」
川;゚ -゚)「…なんだ……わ、私に近寄るな…っ!」
ぴた、と男子生徒は立ち止まる。その距離一m。
( ^ω^)「理由がどうであれ、それが僕にとってラブレターだお」
川;゚ -゚)「は…?意味がわからないことを…」
そう私の言葉を聞いた男子生徒は、何故か笑みを深め──
( ^ω^)「僕、今まで空さんと喋ったことなかったお」
川 ゚ -゚)「それが…どうした…」
私は無意識に、頭の奥がさっと冷たくなるのを感じた。
──この男子生徒の言うとおり、私は教室では一度も言葉を発してはいない。…それが私の日常だったから。
( ^ω^)「空さんは、クラスでとても浮いていたお」
川 ゚ -゚)「…」
( ^ω^)「そして、皆からは恐怖の対象だったお」
川 ゚ -゚)「……知ってる」
( ^ω^)「だからこそ、空さんは皆に嫌われてるかもお」
川 ゚ -゚)「……〝かも〟じゃない。皆、私のことを嫌っている」
そうかお?と男子生徒は小さく呟く。なんだ、何が言いたい。
( ^ω^)「空さん」
川 ゚ -゚)「……なんだ」
( ^ω^)「好きですお」
川 ゚ -゚)「……」
川;゚ -゚)「は?」
( ^ω^)「だから、好きですお」
川;゚ -゚)「な…なな…なんて………?」
私のうろたえっぷりを見て、はぁ、と男子生徒はわざとらしく大きく溜め息をつくと、
( ^ω^)「だから…内藤ホライゾンこと──ブーンは」
( ^ω^)「あなたのことが、好きで好きでたまらないんですお」
──そう言って彼……〝ブーン〟は、ゆっくりと、満面な笑みで微笑んだ。
───キーンコーンカーンコーン…
川 - -)「う、うーん…」
川 ゚ -゚)「……む?」
イマイチ眠気が抜け切らない頭に染み渡る、一つの鐘の音……残酷にも、それは昼休みの終了を告げるチャイムだった。
川 ゚ -゚)「……うおっ?」
いつの間にやら前屈みなって机とぶつかりそうな体制から、戻り急いで辺りを見渡す。
川 ゚ -゚)「……いない」
だが、その目当ての姿は、教室には見当たらなかった。
川 ゚ -゚)「むぅ…」
なんとなく、悔しい気分。こんなにも私が待ってやってんのにどうして来ないのか。
その時だった。
『──ガララ!』
と、勢いよく開いた教室の後方のドア。しかし、あまりにも開ける力が強過ぎて、ドアが『バァァアン!!』と物凄い騒音を立てる。
川 ゚ -゚)(……やっときたか)
ドタドタと騒がしく入ってきた彼は、なにやらキョロキョロと辺りを見渡し、誰かを探しているようだった。
川 ゚ -゚)(こっちだこっち……違う馬鹿!ここにいる!)
ぴた。と、その二つの瞳が私の視線と合わさった。
「……クー!」
彼が、私の名を呼ぶ。
川 ゚ -゚)「…ブーン!」
私も、負けじと彼の名を呼ぶ。なにやら周りがニヤニヤと私を見つめているが、もうとっくの昔に恥など放り捨ている。どうってことない。
(;^ω^)「ご…ごめんお…遅れちゃって…」
川 ゚ -゚)「……理由は?」
(;^ω^)「え、えーと……来る途中に、なんか落ちてたタイヤに挟まって…」
川 ゚ -゚)「…」
(;^ω^)「ほ、ほんとだお!?」
川 ゚ -゚)「嘘をつくならもっとましな嘘をつけ……んなもの、誰も信じないぞ」
少し冷ややな視線を送る。
(;^ω^)「本当なんだおー!じゃ、じゃあいまからでも一緒に確認しにいくお?!直ぐそこだから!」
必死に嘘(?)の上塗りする彼を無視し、私は一歩、彼に近付く。
( ^ω^)「おっ……」
川*- -)「ん…」
ぎゅっ、と私は彼を抱き締めた。
──温かい。それは最初に彼に触れたときと同じ、まるで太陽と同じような温かさ…
( ^ω^)「…クー」
川*- -)「んー…まだ駄目だ…許していないぞ…」
( ^ω^)「いやだから……」
川*- -)「なんだ…そんなに私に抱き付かれるのは嫌なのか…?」
( ^ω^)「いや、むしろ普段にもっとハグしてほしいお。クーは全くデレないんだから…」
川*- -)「ならいいじゃないか…今ならもっと甘えてもいい気分だぞ…」
( ^ω^)「ありがとうだお。でも今は…」
川*- -)「今は…?」
( ^ω^)「授業始まってるお」
バッ川 ゚ -゚)三 (^ω^ )
川 ゚ -゚)「…」
先生「…」
ΩΩΩ「…」
川 ゚ -゚)「さ、さァーて勉強の時間だー!」
( ^ω^)「クー。不自然すぎるお」
川 ///)「う、うるさいっ……!さっさと自分の席に戻れっ……!」
( ^ω^)「はいはい」
自分の席に戻る彼の背中を見つめながら──私はふと、彼が昔言った言葉を思い出した。
川 ゚ -゚)(……ふふっ)
心の中で、思わず笑ってしまうほどに、あの彼が考えそうな短絡的な言葉。
( ^ω^)『ブーンは────』
『この手紙のおかげで、僕は空さんと会話することができたんだお』
『そして君に、好きと伝えることができた』
『もうこれは、僕にとって──〝ラブレター〟そのものなんだお』
おわり
お題
・タイヤにはまっちまった
・ラブレター
・手をつなげば恐くない
・一杯のコーヒー
・相合い傘(無理だったorz)
PR
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クー×ブーンはたまらない