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2017/10/17 10:47 |
('A`)の岐路のようです


    ('A`)の岐路のようです



    いつのまにやら、酒を飲みすぎてしまったらしい。
    頭がぐるぐると痛む、もう一口酒をあおろうと近くに転がっていた瓶を傾けたが、
    一滴も入っちゃいなかった。

    ('A`)「ああ……ちくしょう、くるま、車はどこだ?」

    そうだ、今から恋人の家に行かなくちゃならない。
    自宅で一人酒を楽しんでいるときにかかってきた電話が、別れ話だなんて
    許さない、許されない。
    飲酒運転?
    知るものか。死んだってなんだって、あいつが後悔するんなら笑って死んでやる。

    郊外に住む彼女の家はまだ遠い。車がなけりゃ到底今日中には着けやしない。
    全身がひどく傷む、首を強く打ったのか吐き気がする。気分が悪い。
    悪態をつき、寝転びながらぐるりと首をめぐらせた。



    ('A`)「おいおい……マジかよ」

    背後には燃え盛る車があった。
    倒れかけの標識に突っ込んだ車は紙細工みたいにぐしゃぐしゃで、
    どうやって自分はあれから這い出たのだろうか、と考えるとなぜだか
    笑いが込み上げてきた。

    ('A`)「ふっ……くっくく……へへへ……」
    ( ^ω^)「ヤクでもやってんのかお?」

    いつの間にだか、隣にはブーンが座っていた。
    おかしいな、こいつは今日ツンと旅行に行ったんじゃないのか。

    ('A`)「お前なんでここにいるんだよ、幻覚か?」
    (;^ω^)「やっぱコイツ、キマってるお……」
    ('A`)「やってねーっつの。いててて」

    全身ずたぼろのまま立ち上がろうとする俺を助け起こそうともしないブーン。
    薄情者め。


    ふらふらする。気分が悪い。飲み直したい。
    ブーンが不愉快そうに俺を見る。

    ( ^ω^)「酒臭いお。それに血が出てるお。服が汚れるから近づかないでほしいお」
    (#'A`)「お前ほんっきで薄情だぞおい。
        ツンと付き合ってるうちにあいつの悪いとこ全部うつっちまったんじゃねーか?」
    (*^ω^)「愛の結晶ってことかお?」
    (#'A`)「お前マジで死ねよ?」

    まぁそれは冗談だお、とブーンがあっさり言い放つ。なぐりたい。

    ( ^ω^)「ドクオは何でこんなとこまで来たお?」
    ('A`)「あ? あー……クーに、会いに行こうと思って」
    ( ^ω^)「彼女想いだおー」

    けらけらと笑うブーンの言葉が、今の俺には強烈な嫌みにしか思えない。
    じっとり睨みつける俺に気づいているのか気づいていないのか、
    ブーンはごく当たり前のように歩き出した。



    (;'A`)「お、い。どこいくんだよ」
    ( ^ω^)「この近くに泊ってるホテルがあるんだお。ドクオもくるといいお」
    (;'A`)「でもなぁ……」
    ( ^ω^)「クーの家はまだ遠いお。どうせ車も壊れてるし、そんな恰好じゃどこにも行けないお」

    ブーンの言い分はもっともだし、なによりひどく疲れてしまった。今はただ眠りたい。
    重い足を引きずって、あれ、そういえば、と俺は考える。

    ('A`)「おまえ、ツンと旅行に行ってたんじゃないのか」
    ( ^ω^)「別れたお」
    (;'A`)「は?」
    ( ^ω^)「別れたんだお」

    こちらも見ずにすたすたと歩くブーンの背中がやけに遠い。
    飲みすぎたのだろうか、と強く目をこすった。
    相変わらず、頭はくらくらと強烈に痛んでいる。
    歩く先に、やたらと豪奢なホテルが見えた。あれだろうか?

    ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、」
    (;'A`)「……!?」

    背後にいきなりツンが現れた。なんだ?なんだっていうんだ?どいつもこいつも。



    (;'A`)「お、い。おい、ブーン……!!」
    ( ^ω^)「それじゃあ先にホテルで待ってるおー」

    お前ら別れたんじゃないのか、そもそもなんでお前らここにいるんだ?
    いや、そうじゃない、そういうことを言いたいんじゃないんだ。
    俺は何度もこの道を車で走った。
    そしていつもそうやってクーに会いに行っている。そうだろ?


    じゃあなんで俺は今の今まであのホテルの存在に気付かずにいた?


    ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ドクオ。アンタの書く小説つまんないわよ」
    (;'A`)「……は? なんだよいきなり」
    ξ゚⊿゚)ξ「文はめちゃくちゃだし、展開は無理があるし。
          言っちゃ悪いけどただのオナニーよね」
    ('A`)「…………そんなこと、俺が一番わかってることだって……
        ってそうじゃない、俺、お前らに訊きたいことが」

    ξ゚⊿゚)ξ「でも、クーはあんたの小説好きだって」


    それだけよ、とでも言うようにツンは俺の肩を叩いた。
    それだけ、それだけか。


    ('A`)「……それでも、俺はクーをこの世の全てのように思っていたじゃないか」


    今すぐに会いたい、会って話をしたい。
    別れ話を告げた彼女のまえで、首を切って死んでやろうとまで思っていたのに、
    そんなことを言われたら出来るわけがないじゃないか。

    けれども車は壊れて、この場所から歩いて行こうにも体が痛くて長くは歩けない。
    酒、酒を飲もうにも、ああ、ここには一滴もありはしないじゃないか。
    心も体もふらふらで、それなのにいまさらクーの存在を、大切さを、愛しさを
    思い知ったって、遅すぎるんじゃないのか。


    ブーンがホテルの入り口で微笑んでいる。
    ホテルに入れば、酒もあるしベッドもある。ぐるぐるとぬくもりに包まれて、
    怠惰な享楽を手に入れられる。

    ツンが壊れた車の前でこちらを眺めている。
    家は遠いが、そこにはクーがいる。辛くとも苦しくとも泣き出したくとも、
    ただそこにクーがいてくれる。


    そして俺は、情けなさに唇を噛み、それでも迷いを振り切れない俺は、




    (おわり)

お題
・「ホテル・カリフォルニア」

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2008/05/31 23:40 | Comments(0) | TrackBack(0) | 総合短編

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